書評: 熱鍼療法・入門、横山卓著、たにぐち書店

「熱鍼療法・入門」 の構成は三章に分けられ、第1章は、東洋医学の解説から始まります。
従来の解説書が説く複雑なものではなく、シンプルに東洋医学と西洋医学の違いから始まり、
基本概念である陰陽五行と臓腑経絡、更に気と病気、経絡反応帯を分かり易くカヴァーします。

第2章は、治療法として馴染みの薄いネツシンの意義、器具の説明、操作方法、
基本手技が説明されています。
この第1章と第2章は、予備知識の必要もなく読み進めます。

第3章は、この本のエッセンスである症状・病気別療法が取り扱われています。
全章253ページのうち210ページが、三章に費やされ、かぜや喘息などの呼吸器から、
腰痛・肩こりなどの筋肉・関節の病気・症状を全部で13 のジャンルに分類し、
70以上の症状・疾患をカヴァーしています。

各症状や疾患は、①その疾患や症状の説明、②治療法のポイント、
③具体的治療法の順で構成されていますが、①の内容を全て理解するには、
かなりの臨床の経験が必要と思われます。
一方、②や③は基礎講座修了程度の知識があれば十分であると思われますし、
また、数回の健康講座を履修された方でも場合のよっては対応出来るのではないか思われます。
実際に家庭などで利用する場合は、②や③を覚えれば十分ですが、
ネツシンを臨床に使われている先生方には、是非①を熟読して頂きたいと思います。
疾患や病気に対する知識の玉手箱のようなものだからです。

終わりに、書評を書く者は、この分野の専門家としての知識があるとはいえ、
その本を書いた者と比べ、本が生み出されるまでのエネルギーの消耗度合いと専門性に於いて
なんと微々たるものか、そのようにつくづく思う一冊です。
この著作を使いこなすには少なくとも基礎講座の修了者が望ましく、
ネツシンを臨床に使われている先生方には、現場における虎の巻とも言える一冊です。
しかし、この本のレヴューを書いているものとしては、
それ以上に暗記するほどに読み熟して頂きたいテキストとしてお勧めする一冊でもあります。
また、文中に紹介してあるこの本の続編の登場が待ち遠しいものです。

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